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奄美大島(17・半夏生)《後編》


 翌日は、名物の鶏飯(けいはん)を食べた後。バナトラを回収しながら島の北端へと向かった。ここでYさんの知人ご夫妻に偶然お会いして、しばし情報交換の時間となる。

 「発生のタイミングを予想して採集の予定を組むんですけど、だいたいいつも同じ場所で会うんですよ」


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 ご夫妻と別れてから、Yさんはそう言って大きく笑った。「採集行回廊」のような、採集者だけが通ることのできるルートが存在するのかもしれない。ボクはこの時そんなふうに思った。


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 決して高くはない山の頂上付近(雲霧林?)から立ちのぼった雲が海の方向へと流れ、次第に茜色に染まっていく様子を、ボクらは長い時間眺めていた。日没が過ぎ、いよいよメインのポイントへと車を進める頃合いとなる。胸の高鳴りを抑えつつ、台風3号の進路をそれとなく気にしながら車に乗り込んだ。

 この日は風が強く、ときおり樹上から吹き下ろすようにして湿った風がやってきた。そして、林道の異変に真っ先に気づいたのは、やはりKkさんだった。 


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 『回収し忘れた』という言い訳も可能だろうが、地元で記事になった後とあっては、どうにもこうにも理解に苦しむばかりだ。利己的で、屈折した優越感。そんな心理が、林道の中央付近に無造作に放置されたS字フック(バナトラの一部)と、タバコの吸い殻から見てとれた。

 一度ブログにも書いた事柄だが、地元の方々は『この採集人はマナーが悪いが、この採集人はマナーが良い』などという都合のいい見方はしてくれない。『これだからクワガタを採るヤツらは!』ぐらいが関の山だろう。

 かたや「悪法もまた法」。いま以上に肩身が狭く、酷い状況にならないためにも、最低限のルールは遵守しなければならないとも思う。そんな思いから、いつもよりたくさん距離を移動し、大切な捕虫網を壊してまでも、かけたバナトラをすべて回収して帰る(あるいは、他人が残したバナトラまで回収する)人間がいることを、何かの機会に思い出してほしい。

 「虫捕りのプロ」というありがた迷惑なレッテルだけが、心のどこかでカラカラと音をたてて空回りをしているようだった。


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 次の日も晴れ。荷造りをしてヤマト運輸の営業所に持ち込んでから、ゆっくりと車は走りだした。


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 「青○さん。時間がありますから、“なんとか美術館”に寄ってみますか?」

 今回の成果を話し合った後。昨晩ボクが口に出した「田中一村美術館」のことを覚えてくれていて、Yさんがそう切り出してくれた。興味がない方にはご迷惑かと思い、

 「そこで捨てて行ってください。空港までは、タクシーで向かいますので」

 と、ボクは答えたが、返ってきたのは、

 「そんなことはしませんよ」

 というお二人の笑顔だった。


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[※※奄美大島に滞在した3日間は天候に恵まれ、アマミヒラタ:♂2/♀1スジブトヒラタ:♂24/♀3。そして、メインのアマミノコギリは、♂43/♀11という、ボクにしてみれば出来過ぎた成果でした。これも一重に、ガイドを引き受けてくださったY(大巨神)さん、同行していただいたKk(ドクロファーム)さんのおかげに他なりません。この場をお借りして謝辞を申し述べたいと思います。ありがとうございました]

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