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東名集中工事


「東京料金所を“くぐって”から、(首都高を)降りるまで50分ってとこですね…」

 厚木からノロノロ運転となり、途端に無線のやり取りが活発になった。「了解しました。ありがとうございます」と、運転席のドライバーが淡々とした抑揚のない口調で応じる。

「降りてからの工事渋滞は・・・」

 続けざまに聞こえてきた相手方の声が、本線を走る大型クレーン車の騒音でかき消される。今週いっぱいは、東名高速の集中工事。プロドライバーでなくても道路事情は気になるところだった。


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「用賀パーキングで…ですね。環パチからの合流する車が多くて」

 そのあとの、「用賀から渋谷まで20分」、「通勤時間帯」といった言葉だけはなんとか聞き取れたが、それ以外の内容は、やはりトラックの騒音に阻まれNGだった。


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 昼食のために入った郊外型レストランの待ち合いで、母の知人に会う。それもタテ続けに6人だ。

「息子です。いつも母がお世話に……」

 と、立ち上がって帽子をとるボクを尻目に、7人の兵(つわもの=ババア)どもは、これから野武士討伐に出掛けんばかりのテンションで、口々に近況報告を済ませていく。見送るボクはすでに農民Aの立ち位置だ。

「会うときは、会うもんやね」

 と、年長組の母は、さすがに呆れ顔になった。琴、陶芸、竹絵、体操……等、参加するサークルの数に比例して、知人の顔ぶれも増えていくのだろう。無理もないことと思うのと同時に、歴戦の手練のみが有するこのとできる、このとてつもない生体エネルギーを、どうにかして平和利用できないものか? と思案する自分もいた。


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「あの靴は……?」

 実家の棚にあった皮革製でもない、布製でもない光沢のある小さい靴が気になった。

「あぁ、それね。今度の文化祭に……」

 と母は、焼き窯に入れるまえの制作過程を説明しはじめた。午前中はこれの「窯出し」だったそうだ。

 ひと息ついた後、清掃センターまで粗大ゴミを出しに行く。それから夕飯までの時間、竹絵の部品の制作を手伝うことになった。

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 竹絵とは、竹本体、皮等を加工して、半立体で奥行きのある画面構成をする技法のことで、それぞれのモチーフに応じて、竹の質感を生かしつつ、成形し、焼いて色調をつけ、接着するという作業が延々と続く。

 今回はミッションは、橋の欄干と支柱。切り出しナイフで少しづつ薄くして、違和感のないよう仕上げていく。主役は舞妓は〜〜〜ん。少々ベタだが、手前に柳の枝を配し、背景には大文字焼きがある構図だ。

 師、下僕(ボク)の前に座して宣(のたま)わく、

「あと少し薄くし給へ(*)」

 *現代語訳:『あんた、もうちょっと薄ぅでけへんかな? ここと、ここ。あとここもや』

 やれやれ。骨の折れる作業だ。


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 バスタ新宿を出て、高速バスは首都高から東名高速に入る。偶然にも昨日と同じドライバーだった。

「ええ、厚木までは“1番”。厚木からは“3番”ですね」

 往路と同じように、再び無線によるやり取りがはじまった。会話のなかにあった番号の意味が、港北インターを過ぎたあたりでなんとなくわかった。

 神奈川県に入ってほどなく、3車線あるうちの一番左の走行車線にパイロンが並びはじめ、工事関係の車両や係員が待機しているのが確認できた。そして厚木インターを過ぎると、今度は、一番中央分離帯寄りの追い越し車線にパイロンが置かれるようになり、夥しい数の工事車両、ダンプカー等が待機しているのが見えた。

 つまり、『厚木までは3車線あるうちの一番左に(1番)に交通規制があり、厚木からは、一番中央分離帯寄りの外側から数えて3番(目)の車線が規制されている』という意味合いのようだ。

「8時半過ぎると、2番と3番が完全に潰されちゃいますよ。これ」

 短い言葉で端的に状況を説明する(情報交換をする)手段として、独特の言い回しが定着したのだろうと思う。この他、3桁の数字のみを伝える場合もあったが、これは、路肩のキロポストの数字を読んだ(走行している位置を知らせる)ものだろうと推測できた。


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 果たして、裾野インターを出たのは午後8時過ぎ。足柄SAで10分の休憩を取ってこの時間だったから、集中工事の影響は、この時間帯の、この富士急高速バスの路線に限って言えば、ほぼ無いに等しかった。

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