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罔象(みずは)


 月は盈ち、そして虧ける。

 劇場用長編アニメーション映画『君の名は。』で、象徴的に描かれた月は、概ね半月(※HALF MOON:主人公「瀧」のTシャツのデザインにもなっています)。満月の描写も完全な姿ではなく、電線がクロスするように描かれていて、直感的に、半身=“カタワレ(時)”を連想させた。

 ヒロイン「三葉」の生家、宮水神社の神紋は、組紐を幾重にもクロスさせたような六芒星ならぬ、五芒星。「一葉」のような一族の女主人的な立場の人は、かつて刀自(とうじ)と呼ばれ、それゆえ、南西諸島の方言として今も残る「トゥジ」は、『妻、奥さん』の意味になるそうだ。それがそのまま、酒造りの最高責任者「杜氏(とうじ、とじ)」へとつながっていく。

 あるいは、兵庫県西宮市や、同神戸市あたりに限定されるのかもしれないが、宮水とは、この地域に湧き出る天然の硬水のことで、酒造りに適している。神社の名称も、日本酒(酒米から醸造した清酒)との深いつながりを示唆しているように思えた。

 本編の冒頭シーンで登場する、“口噛み酒”の原型をいまに伝える清涼飲料水のミキ(=神酒の語源)を、ボクらは奄美大島で目にした。


彗星


 糸守町のロケ地となったのは、飛騨高山。糸守湖のモデルは諏訪湖とされている。

 一方で、「産霊宮水上神社(むすびのみやみなかみじんじゃ)」という名称の神社(※一葉の台詞に出てくる「ムスビ」が、字幕で「産霊」となっています)が、神奈川県相模原市に実在している。ここの祭神は、王権サイドと政略結婚させられたがため、天孫系とされているが、もとは海洋系の木花咲耶姫。

 舞台で舞う三葉が持っていた、龍(水神)を象(かたど)った神楽鈴、髪飾り・・・。

 瀧は「龍」。そして、三葉は「罔象女神(みずはのめ)」だろう。不幸にして落命した、もとは一心同体のパートナーだった魂(氏神)が、“片割れ”を求めて1200年という、ながいながい時を経て出会い、氏子(かつての一族)の命を救うという壮大なドラマ……。きわめて個人的だが、そんな気がしてならなかった。

 やはり、「自分と同じ不幸を繰り返さないため」。日本古来の神々が、後世に伝えたかったそんな想いや、願いが、参拝者の慈しむ思いと出会う場所が神社。そこから転じて、縁結びや、家内(交通)安全の、「願掛け」の習慣になっていったのだろう。そんなふうにも思えた。

 
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